ダメなオタクのダメな生き方

言いたい事だけ書きます

ミュージカル「スタミュ」2ndシーズン

君は、ミュージカル「スタミュ」2ndシーズンを観たか




夏がきた。暑い。どうかしている。
ジリジリとした陽射しを背に、外苑前駅からの緩やかな坂を上っていく。髪の毛が蒸れて、せっかく髪も巻いたのに取れてきている。目の前でドルオタが無銭しているのを横目で見ながら、私はプレゼントの紙袋を揺らして歩く。
何でこんなに暑いのに、何で私はこんな所で汗かきながら歩いているんだろう。
マチソワ間にダッシュして、表参道まで行ってきた。ぼっちで行動しているから、まともに会話したのは某ブランドの男性店員だけだ。駅の階段上がって徒歩1分くらいの店舗はめちゃくちゃ便利だったから、次の現場もここでプレ買おう。ぼーっと考え事しながら歩いて、私は今日も推しの芝居を見に行く。

観る前にアニメを履修してから行こうと思ったのに、仕事が忙しくてまったく分からないまま観に行った。
初日、幕が上がると、舞台上には本当に楽しそうに芝居をする推しがいた。
こんなに楽しそうに演じる推し、たった半年と少しという短い世界しかしらないけれど、初めて見たかもしれない。それくらい楽しそうに、彼は舞台の上に立っていた。
本当は、彼の役については、ずっと苦手意識を持っていた。目の前で他のファンのこと口説くんだ。へえ。みたいな、みっともなくて嫌な感情しかなかった。楽しく観にいけないだろうな、そう思っていた。
でも、公演が進めば進むほど、そんな嫌な感情はどこかへいってしまった。
物語はすごく単純で、卒業する先輩達とそれを送り出す後輩たちのキラキラして苦しくて、それでも希望に向かってキャラクター達が進んでいくストーリーだ。
よくある、ありきたりな青春の物語。
だけど、そんな先の展開が読める物語だからこそ、千秋楽に向かって公演を重ねれば重ねる程、観客もスタミュミュが終わってしまう事実を突きつけられる。
主人公達が先輩との別れを自覚する姿が、自分にリンクしていく。
ああ、もうすぐ私もこの夢物語から覚めてしまうんだ。大好きな彼とも、あと少しで別れしなくちゃいけないんだ。
『夢を諦める方法なんて知らない!』と主人公が叫ぶ。
私が追っているのは、推しの夢で、そんな夢を追う推しの後ろをついていきたいんだ。それを諦める方法は、今の私には分からない。まだ推しの後をついていかせて欲しい。
東京楽を迎える頃には、いつか来るだろう別れの気配のせいでカーテンコールで泣いていた。
物語の最期、夢に向かって走っていけるように、鳳先輩は星谷の背中を押してくれる。
私の背中を押してくれる人はいない。私はオタクだから、自分で、自分の力で苦しくても推しの後をついていかなくてはならない。
俯くと、足元には桜の紙吹雪が落ちていた。
オタクは消耗するばかりだ。しんどい。でも、推しが本当に、最高に楽しそうに笑って舞台に立っていたら、全てチャラになる。
楽しそうに、お芝居をする彼の姿が見れた。それだけで、今日、この椅子に座った意味はあった。

スタミュミュはとっても楽しくて、ハッピーで、私を幸せにしてくれた。
こんな、どうしようもないダメな私に、楽しそうな推しの笑顔を見せてくれた。感謝しかない。やったね!
最近、心底思うのだが、芝居でちゃんと返してくれる推しの事を応援できる環境はオタクとして本当に恵まれている。
こんなに沢山いる若手俳優の中で、上手い下手は別として、ストイックに自分の仕事に向き合ってくれる推しと巡り合えるのは奇跡だと思う。私の推しは正直まだまだ成長期で、演技については発展途中だ。ミスもするし、フリートークは苦手で、カテコのコメントも「それ、今さっき○○君が言ったやんけ!」みたいな、ふにゃふにゃ加減だ。
だけど、絶対に真面目に仕事に取り組んでくれる。俳優として、演技に向き合うという意味では裏切られた事は無い。
スタミュミュは、私にそれを思い出させてくれた。

スタミュミュでは漣先輩が本当にかっこ良くて、歌もダンスも最高だったので、東京楽の後に調度やってたライブに行って漣先輩役の彼にありがとうを言ってきた。「こんな所まで来ちゃったの?」と笑ってくれたが、漣先輩のおかげで私のQOLは爆上がりだった。漣先輩の夢女になりたい。(ぶっちゃけ推しの100倍話してくれて、凄いオタクの扱い上手いし、彼のファンは幸せだろうなと思った。)
キャラクターとしては、天花寺くんが凄く愛しくて、本当に良い演技をしてくれる役者さんだなと思った。天花寺くんの存在も感謝しかない。正直、鈴木勝吾さんのお芝居は別作品でも観たい。デビミュの時は、内藤大希さんがそれだった。他の役者さんの良い所を見つけられるのも観劇の楽しさだと思う。

そんなこんなで、くそ暑い中誰とも会話のないまま大阪へ行き、ハイボールを飲んで、推しの誕生日を祝ってきた。
楽しかった日々も終わり、今日、ふと仕事終わりの電車の中で思い出した事がある。
そもそも推しの事を応援しようと思ったきっかけ。それは、推しが私の見たかったキャラクター像を、私の求めている以上の答えで表現してくれたからだった。
何でこんな大切な事を忘れていたんだろうか。
私、推しと、推しの演じる役の解釈が完全一致なんだ。
何だか肩の荷が下りた気がした。今も、これからも同短拒否のダメオタクだけど、推しと解釈が完全一致という事実のおかげで、次の現場も生き残れそうだと思った。


もう直ぐ次の現場が始まる。オタクの夏はまだまだ始まったばかりだ。